1984年製作の実写モノクロ短篇を、全く同じタイトルでモノクロのまま長編化したリメイク版。ただし今回はストップ・モーション・アニメで、なおかつ3D仕様。もしかすると初のモノクロ3D映画かもしれません。ストーリーは、枠組みこそオリジナルと変わりませんが、登場人物が増えて枝葉のエピソードも追加され、さらに見応えのある劇映画となりました。科学展をめぐる子供達の競い合いのエピソードを導入した事により、山場をよりスケール・アップして盛り上げる事にも成功しています。 具体的には、パニック・ホラー的な見せ場が用意されている訳ですが、それら一連の場面や、死体を甦らせる実験の高揚感溢れるシーン構成も迫力満点。又、古くはハマー・フィルム辺りの怪奇映画(主人公の両親がテレビで『吸血鬼ドラキュラ』を観ており、この画面だけは実写になっています)から、日本の怪獣映画(このクリーチャーを甦らせるのは日本人の子ですが、バートンは「意図的じゃない」と供述しています)、さらに『グレムリン』や『ジュラシック・パーク』など、古今東西のモンスター映画の記憶に満ち満ちているのも嬉しい所。 ストーリーは拡張され、画面も実写から人形アニメに変わりましたが、それでも冒頭の自主映画上映の場面(こちらも3Dという設定で、主人公達も専用メガネで観ています)から、スパーキー復活場面の二対の円盤や3体のシカのオブジェ、墓地の丘や、クライマックスの風車、円形に配置された車など、オリジナルの画面をそのまま再現している箇所も少なくありません。又、人形アニメになった事でデザイン性が増し、キャラクターもバートン&ヘインリックスらしいグロテスクさとキュートさが同居する、独特の造形になっているのは、ファンにとって嬉しい所でしょう。 一口にストップ・モーション・アニメといっても、新作が出る度に技術の進化は著しく、本作でも、キャラクターの動きの滑らかさ、自然さは驚異的といっていいほどです。しかも、セットや小道具、背景に至るまでディティールの描写が緻密を極め、正に製作総指揮のハーンが言う所の「正気とは思えないほど徹底していて、観客が現実に引き戻される事はない筈だ」というのも、決して嘘ではありません。 モノクロ映像の効果も絶大で、息を飲むほどの美しさ。バートンがずっと描いてきたアメリカ郊外住宅地のイメージや中流家庭の生活感、そして、光と影のコントラストのが強い表現主義的な色彩と構図、さらには古風な怪奇映画を彷彿させるゴシック的な造形感覚が、全く自然に渾然一体となった世界が展開。これはもう自分のブランドと世界観を確立したバートンにしかできない離れ業という感じがします。映像自体も非常に美しく、格調の高いもので、一つ一つの画面の芸術性の高さも特筆大書したい所。 |