ウェンズデー シーズン1

〜 第1話『水曜生まれの悲哀』、第2話『一人ぼっちの哀愁』、第3話『友情の苦悩』、第4話『すばらしき夜の憂鬱』

Wednesday Season1 〜 Epiosode1:Wednesday's Child is Full of Woe, Episode2:Woe is the Loneliest Number, Episode3:Friend or Woe, Episode4:Woe What a Night

2022年、アメリカ (56分、47分、46分、48分)

 監督:ティム・バートン

 製作総指揮:ティム・バートン、スティーヴ・スターク

       アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー

       アンドリュー・ミットマン、ゲイル・バーマン

       カイラ・アルパート、ジョナサン・グリックマン

       トミー・ハーパー、ケヴィン・ラファティ

       ケヴィン・ミゼロッチ

 共同製作総指揮:トッド・ウィリアムズ、カーラ・ゴンザレス・ヴァルガス

         デヴィッド・ミンコウスキ

 製作:カルメン・ペペレア

 共同製作:ニック・イアネッリ、ナタリー・テスタ

 脚本:アルフレッド・ガフ、マイルズ・ミラー (第1、2話)

    カイラ・アルパート (第3、4話)

(オリジナル・キャラクター:チャーリー・アダムズ)

 撮影監督:デヴィッド・ランゼンバーグ

 プロダクション・デザイナー:マーク・スクルートン

 衣装デザイナー:コリーン・アトウッド

 編集:ジェイ・プリチドニー

 音楽:ダニー・エルフマン、クリス・ベーコン

 ユニット・プロダクション・マネージャー:ラズヴァン・バデア

 第1助監督:ジョージ・ウォーカー

 第2助監督:シモーナ・ディヌ、エミル・グリン・リース

       エミリー・バルッソン (第3.4話)

 共同衣装デザイナー:マーク・サザーランド

 出演:ジェナ・オルテガ  エマ・マイヤーズ

    ハンター・ドゥーハン  パーシー・ハイネス・ホワイト

    クリスティーナ・リッチ  グウェンドリン・クリスティ

    リキ・リンドホーム  ジェイミー・マクシェーン

    ジョイ・サンデー  ジョージ・ファーマー

    キャサリン・ゼタ=ジョーンズ  ルイス・ガスマン

    ムーサ・ムスタファ  ナオミ・J・オガワ

* ストーリー

 度を越した残虐な復讐をして退学になったウェンズデーは、両親の母校ネヴァーモア学園に送り込まれる。のけ者のモンスターたちが集められたこの学園でもさらに孤立するウェンズデーだが、近くの森で起こっている連続殺人事件について保安官から事情を聞かれる。

 彼女は学内の秘密結社の存在を探り当てる一方、ボートレースに参加させられたり地域交流でピルグリム・ワールドを訪れたり、学校の行事にも参加。地元のカフェの青年や同級生と知り合ってゆく中、嫉妬による攻撃や意図しない恋愛模様にも巻き込まれる。一方、連続殺人はまた起こり、ウェンズデーにも関わりのありそうな、謎めいた過去の出来事も明るみになってゆく。

* コメント

 バートン製作総指揮で、『アダムス・ファミリー』の長女ウェンズデーを主役にした、Netflixのスピンオフ・ドラマ・シリーズ。Netflixの最多視聴シリーズの記録を塗り替えた上、エミー賞(コメディ部門)作品賞、主演女優賞を含む12部門にノミネートされた。1時間枠で全8話中、バートン自身が最初の4話を監督。MGMやワーナー・ブラザースが製作に加わっているせいか、ボックス・セットでソフト化されたのは有り難い。

 衣装のコリーン・アトウッド、音楽のダニー・エルフマンをはじめ、バートン組のスタッフも参加している他、過去に『スリーピー・ホロウ』でバートンと組み、バリー・ソネンフェルド監督の映画版『アダムス・ファミリー』シリーズでウェンズデーを演じたクリスティーナ・リッチが、学園で唯一の人間教師を演じている。

 世界観がファンタジーに依拠していて、モラルの価値観も逆転しているような物語は、作る方も観る方も意識を物語の設定にアジャストさせるのが難しいものである。バートンは正にその隙を衝いて成功したような人だと言えるが、それでも『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』や『ダーク・シャドウ』のように、逆転なのか正転なのか、どっちのモラルに寄せて観ればいいのか最後までよく分からない映画は、やっぱり存在する。

 映画版『アダムス・ファミリー』もその点がうまく行っておらず、ヒットはしたようだが、実際には中間色のよく分からない内容である。そう考えると、本作の圧倒的なヴァイタリティと世界観の豊穣さは奇跡的とさえ言える。私が思うに、成功の鍵は脚本のウィットとアイロニー、そしてミステリーの構造にあるように思う。

 要は、随所に散りばめられた機智に富むセリフの数々と、謎解きの面白さがメインの見所で、舞台がモンスターたちの学園であるという設定には、あまり重要性が与えられていないという事である。本作の場合、狼男やセイレンなどのモンスター属性は、あくまでバートン作品でお馴染みのアウトサイダー、のけ者のメタファーにすぎない。

 主人公は思春期の鬱屈と怒り、過剰な自意識と潔癖性的な反抗心を全て詰め込んだようなキャラクターで、その意味ではバートン作品のキャラクターにうってつけである。ちなみに全エピソードのタイトルに“Woe”という単語が使われているのも象徴的だが、日本語版ソフトの翻訳者は「悲哀」「哀愁」「苦悩」「憂鬱」と全て違った日本語を当てていて見事。

 脚本が素晴らしいと他の部門も俄然生き生きしてくるのは映像作品の常で、本作も撮影、美術、編集、音楽のみならず、まずバートンの演出自体が、ここ数年のどこか虚ろな感じを吹き飛ばすほどにエネルギッシュで生彩に富んでいる。

 バートンにいつまでもゴシック調やアニメチックなデフォルメ、アウトサイダー気質を求めるのも間違いなのだろうが、本作の、水を得た魚のような圧倒的イマジネーションの飛翔には有無を言わせぬものがある。本人にとっても恐らく、この問題は諸刃の剣なのだろう。もしくはシナリオさえ優れていれば、その他の問題は正当化されうるという事かもしれない。それくらい本作の語り口は、集中力が高く濃密である。

 ちなみに第5話以降の監督は、TV『ヤング・スーパーマン』シリーズのジェームズ・マーシャルと、新進のガンジャ・モンテイロ。

* スタッフ

 製作はディズニー・ピクチャーズとルーカス・フィルムの幹部で、『ビッグ・アイズ』や『ビートルジュース・ビートルジュース』でバートンとも組んでいるトミー・ハーパー。ブラッド・ピットと共にプランBの社長を務める、『それでも夜は明ける』『ムーンライト』のデデ・ガードナー&ジェレミー・クライナーら。

 脚本は『スパイダーマン2』『ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝』の、アルフレッド・ガフとマイルズ・ミラーのコンビ。彼らはプロデューサーも兼任し、バートンの次作『ビートルジュース・ビートルジュース』も執筆している。ちなみに第3、4話の脚本は『お買いもの中毒な私!』、TVシリーズ『コード・ブラック/生と死の間で』のカイラ・アルパートが担当(同じく製作も兼任)。

 メイン・スタッフは新進を起用している様子で、バートン組は衣装のコリーン・アトウッドと音楽のダニー・エルフマンくらい。その音楽も、エピソードによってはテーマ曲のみだったり、共同でクレジットされているクリス・ベーコンとの分担だったりする。

 撮影のデヴィッド・ランゼンバーグは経歴不明だが、カラフルかつファンタジックで叙情性も豊かという、素晴らしい仕事ぶり。他の担当作に『セレステ∞ジェシー』『シグナル』『ペーパータウン』『アデライン、100年目の恋』『ライリー・ノース、復讐の女神』『月影の下で』。

 プロダクション・デザインのマーク・スクルートンと、編集のジェイ・プリチドニーは『ビートルジュース・ビートルジュース』にも参加(前者は『ミス・ペレグリンと奇妙な子どもたち』にも美術スタッフとして携わっている)。

* キャスト

 主人公ウェンズデーを演じるのは、新進のジェナ・オルテガ。小柄なラテン系のため役を得るのに苦労していたそうだが、本作ではウィノナ・ライダーやヘレナ・ボナム=カーターの系列の、いかにもバートン好みの色白で大きな目のアニメチック美女に見えるから凄い。バートンも彼女を気に入り、『ビートルジュース・ビートルジュース』にも起用している。

 ルームメイトのイーニッドを演じるエマ・マイヤーズや、高飛車なセイレンの女子生徒ビアンカを演じるジョイ・サンデー、謎めいた男子生徒ゼイヴィアを演じる、パーシー・ハイネス・ホワイト、カフェの若者タイラーを演じるハンター・ドゥーハンなど、若者達のキャスティングも新進中心。

 教師ソーンヒルは、かつて映画『アダムス・ファミリー』シリーズでウェンズデーを演じ、『スリーピー・ホロウ』でバートンとも組んだクリスティーナ・リッチ。あまり頻繁には登場しないアダムス・ファミリーは、母モーティシアに『マスク・オブ・ゾロ』『トラフィック』『シカゴ』のキャサリン・ゼタ=ジョーンズ、父ゴメズに『ブラック・レイン』『カリートの道』『ブギーナイツ』『スネーク・アイズ』『トラフィック』のルイス・ガスマン。

 校長ラリッサ・ウィームスには、TV『ゲーム・オブ・スローンズ』シリーズや『ゼロの未来』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『同/最後のジェダイ』『マーウェン』のグウェンドリン・クリスティ、精神科医ヴァレリー・キンボットに『ミリオンダラー・ベイビー』のリキ・リンドホーム、タイラーの父でもある保安官ドノヴァンに、『アルゴ』『ゴーン・ガール』『Mank/マンク』のジェイミー・マクシェーン。

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