レオナルド・ディカプリオは、スピルバーグ映画初出演にして、現在唯一の出演作。スターの起用を避けるスピルバーグには珍しく豪華な配役ですが、それが映画の華やかさにそのまま繋がっているのは、見事な人材活用という他ありません。ディカプリオは元々、若者の複雑な内面を繊細に演じる事に定評がありますから、この役もそういった資質を充分に活かせるキャンバスだったのではないでしょうか。 トム・ハンクスは当初、父親役でカメオ出演する予定だったそうですが、本人の希望でカール役を演じる事になりました。その際、律儀にもディカプリオに「僕も出演するけど構わないか?」と許可を求めたというエピソードは、彼の人柄を感じさせて余りあります。今回はひたすら真面目な堅物の捜査官を演じていますが、執念一辺倒ではなく、ヒューマンな温もりも感じさせる点はさすがハンクスと言えるでしょう。 クリストファー・ウォーケンはその恐ろしげな風貌から、悪役や少々危ない役も多いですが、スピルバーグは彼の大ファンで、いつも「出演して欲しい役者のリスト」に名前を載せていたそうです。ただし、今回彼の名前を挙げたのは、製作者のパークスとの事。彼の強面のイメージとはひと味違う、どことなく悲哀も漂わせた優しい父親のキャラクターは秀逸で、オスカーにノミネートされました。 母親役は、ゴダールやトリュフォーの映画で知られるフランスの名女優ナタリー・バイ。実際にフランクの母親がフランス人だったので、訛りなどは気にせず参加したとの事です。スピルバーグの友人でパリ在住のブライアン・デ・パルマ監督が彼女を紹介したそうですが、今回は父親をクローズ・アップした映画なので、彼女の役はそれと較べるとやや影が薄いかもしれません(画面にはまあまあ登場しますけど)。 少し間の抜けた箱入り娘をコミカルに演じたエイミー・アダムズは、後に演技派女優として大成しますが、本作の時点では大抜擢でした。スピルバーグによると、「(キャスティング・ディレクターの)デブラ・ゼインには人を見る目がある。ブレンダ役の候補は大勢いたが、彼女はアダムズのビデオを宝物のように握りしめ、興奮した面持ちで『真っ先に見て!』と言ったんだ。その日の内にディカプリオにも映像を見せたが、彼も6、7人の中から一発で『彼女だ』と言った」という話です。 その娘の父親を演じるのは、意外にもスピルバーグ作品初出演のマーティン・シーン。こういう名優が、ちょっとした役で出演しているのはいかにもゴージャスですね。高級娼婦役で出ているジェニファー・ガーナーは、同時期にJ・J・エイブラムズのTVシリーズ『エイリアス/2重スパイの女』で主演に抜擢されており、その後もベン・アフレックと結婚したり、プロデューサー業に進出したり、なかなかの大活躍。『スパイダーマン』シリーズで秘書役を務める、エリザベス・バンクスも出演しています。 |