製作陣は、前作同様アンブリンが外れ、ドリームワークスのパークスとマクドナルド、スピルバーグ自身と、彼の関係作品でスタッフとして腕を振るってきたパトリシア・ウィッチャーが、エグゼクティヴ・プロデューサーとしてクレジットされています。脚本は、『ガタカ』『トゥルーマン・ショー』のアンドリュー・ニコルと、ロックバンド“ブッシュ”出身で後にジャーナリストとなったサーシャ・ガヴァシによる原案を、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』に続いてジェフ・ネイサンソンがまとめたもの。 スピルバーグの元に送られてくる数多くの脚本の中、本作も週末に読むべき作品リストに入っていました。ある土日で6本読んだ中でこれは最後の1本だったそうですが、読んだ途端に前の5本を忘れてしまったほど、素晴らしい脚本だったとの事。とにかくアイデアが素晴らしく、製作のパークスと練り直した際も、良い映画だからいじり過ぎないよう注意したといいます。 撮影監督のヤヌス・カミンスキーは、セットがあまりに大規模なため、ライティングするというよりも、元々セット自体に照明を組み込んで設計しています。色彩的には、前半の冷たいトーンから、後半に向かって徐々に暖色系のカラー・パレットを使う事で、主人公の置かれた状況と心理状態を反映。ちなみに彼自身も東欧ポーランドからの移民で、入国審査の時に再入国できるかどうかいつも恐怖を感じていたそう。本作の物語は、人ごとは思えないと語っています。 プロダクション・デザイナーは、『マイノリティ・レポート』でもスピルバーグと組んだアレックス・マクドウェル。舞台となる空港は、なんとロス近郊にある格納庫の中に、実際に空港を建設しています。マクドウェルは、こうなるとデザイナーとしての知識や能力だけでなく、建築関係のそれが必要だったと言っており、本物のエスカレーターが映画セットに組み込まれるのも、『ワン・フロム・ザ・ハート』以来初めてとの事。 空港内の各ショップは実際の店舗に出店を依頼しており、本物の店員が出演するか、エキストラが店員を演じる場合は実際に研修を受けてから参加しています。監督も「映画作家としてものすごく刺激されるセット。1インチ四方に至るまで使い尽くした」と語っています。ちなみに建設中のウィングは、隣の別倉庫にセットを組み、税関と入国審査の場面はモントリオール国際空港でロケ撮影。 こういう明るい映画だと、ウィリアムズの音楽も生き生きとしてきます。民族音楽風のテーマ曲は、クラリネットとツィンバロンを使って東欧らしいムードを醸成。噴水の場面以降、何度か流れるラヴ・テーマは、モダンな和声を使う事が多いウィリアムズには珍しく、ロマンティックかつ古風なメロディで、聴いているだけで胸に情感が沁み渡るような、素敵な音楽です。 元々脚本にはスタントの要素などありませんでしたが、皆が床で滑って転ぶというアイデアも、ハンクスが40台のカートを押す場面も、スピルバーグが思いつきで加えたもの。後者は、実際には6台が限界だそうですが、近年のスピルバーグ作品で特殊仕掛けを一手に引き受けているマイケル・ランティエリが呼ばれ、大量のカートを押す事が出来る装置を作り出したとのこと。こういう所は、優秀なアーティスト達をチーム感覚で起用できる、スピルバーグ映画ならではの強みですね。衣装デザイナーのメアリー・ゾフレスも、前作から続投。 |