シリーズ3部作の終結から19年振りに発表された、4本目にあたる新作。時代設定も『レイダース』からそれくらい経った頃で、50年代が舞台。1作目の登場人物だったマリオンが復活し、彼女とその息子がストーリーに絡んでくる点は、ファンを意識したお祭り的な内容にもなっています。現実に存在する伝説や史実を元にストーリーが作られている当シリーズですが、本作もナスカの地上絵やエル・ドラドの伝説、クリスタルの頭蓋骨と、謎めいたモティーフを散りばめ、それがシリーズ中最も荒唐無稽なSF的展開に向かいます。 残念ながら、演出と演技にどことなく運動神経の低下が感じられる点は否めません。特にハリソン本人が担当していると思われるスタントは、動きの重さも感じられ、演出にもかつての軽快なリズムやシャープな切れ味が不足するように感じます。又、過去作では原住民が無闇やたらと殺される点が批判を受けましたが、世評の悪さを反映してか、直接的な描写も被害人数も減っていて、加害者もほぼ敵側となっています(ただし敵側の脇役はたくさん殺されますけど)。 ただ、脚本家は変わっても、カー・チェイスの場面などアイデア満載でやはり飽きさせませんし、地図の上を飛行機が飛んでゆく移動場面や、謎とき、冒険の楽しさもちゃんと盛り込まれています。冒頭でパラマウントの山のマークからオープニングに突入するのもお約束で、今回はそのマークがプレーリードッグの巣に重ね合わせられるのがユーモラス。主人公達と敵一味が同じ物を追い、時に戦いを交えながらも主人公達が到達した目的地に、結局敵が合流するという作劇は、今回も踏襲されています。 舞台設定が50年代なので、音楽や若者達のファッションにオールディーズのスタイルが描かれるのは、前3作とムードを異にする所。一方で、核実験の場面など、本当に必要なのかどうか分からない、マンガみたいな描写もあります。本作ではマリオンの息子が登場するとあって、シリーズ中でも特に主人公のプライベートな人間ドラマが前に出た作品ですが、その意味では、過去三作よりもドラマ的にバランスは良いかもしれません。ジュニアが率先して動き出し、自ら推理を働かせはじめる姿は頼もしくもあります。 スピルバーグの演出に関していえば、描写力は相変わらず健在。特に前半の、ロシア人達とインディが登場する前後の場面は、様式化された振付けやキャメラワークが80年代の彼を思い出させます。火薬や弾薬で磁気の反応を見て目当ての箱を探す場面も、こういう、物理的現象をデフォルメする事で何が起っているのかを暗示するテクニックは、スピルバーグの独壇場と言っていいでしょう。クライマックスも、ホラー的な要素は後退する一方、神秘的な美しさや雄大なスケール感が勝り、『未知との遭遇』の世界に近接しています。 |