タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密

The Adventures Of Tintin : The Secret Of The Unicorn

2011年、アメリカ/ニュージーランド (107分)

 監督:スティーヴン・スピルバーグ

 製作総指揮:ケン・カミンズ、ニック・ロドウェル、ステファン・スペリー

 製作:スティーヴン・スピルバーグ

    ピーター・ジャクソン、キャスリン・ケネディ

 共同製作:キャロリン・カニンガム、ジェイソン・マッガトリン

      アダム・ソムナー

 脚本:スティーヴン・モファット

    エドガー・ライト&ジョー・コーニッシュ

 (原作:エルジェ)

 美術監督:アンドリュー・L・ジョーンズ、ジェフ・ヴィスニェフスキ

 編集:マイケル・カーン

 音楽:ジョン・ウィリアムズ

 第1助監督:アダム・ソムナー

 スピルバーグ助手:クリスティ・マコスコ・クリーガー

 音響コンサルタント:ゲイリー・ライドストロム

 セカンド・ユニット監督:ピーター・ジャクソン

 出演:ジェイミー・ベル  アンディ・サーキス

    ダニエル・クレイグ  ニック・フロスト

    サイモン・ペッグ  トビー・ジョーンズ

    ケアリー・エルウェス

* ストーリー 

 相棒スノーウィと世界中を駆け巡り、難事件に挑む少年レポーター、タンタン。ある日彼は、美しい船の模型を手に入れる。それは海賊レッド・ラッカムに襲撃され、海上で忽然と消えたといわれる伝説の軍艦ユニコーン号だった。やがて模型のマス トに暗号が記された羊皮紙の巻物を発見したタンタンだが、ほどなく謎の男サッカリンに拉致され、貨物船の船室に閉じ込められてしまう。スノーウィに助けられたタンタンは、ユニコーン号最後の船長アドック卿の子孫、ハドック船長と出会う。2人は、サッカリンの執拗な追跡をかわしながら、ユニコーン号の謎を解き明かすべく奔走する。

* コメント  

 ベルギーの人気絵本シリーズ『タンタンの冒険』を、スピルバーグ初のパフォーマンス・キャプチャーによる3Dアニメーションで映画化した作品。そもそもエルジェの原作は、『レイダース』公開当時からその類似点を指摘されていたもので、本作が子供版『インディ・ジョーンズ』の趣があるのも当然と言えます。ただ、意外に人が死ぬ映画なので、完全にファミリー向けとは言い難いかもしれません。

 いつもと演出の勝手が違うせいか、やや画面に隙間風が吹いてスカスカする印象もなくはないですが、それを補って余りあるというか、空撮ショットの多用をはじめ、実写では困難なキャメラの動きや構図が満載。切り絵風のポップなデザイン・アニメに、ジャズっぽい軽快なテーマ曲が重なるオープニング・タイトルからして、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のそれを彷彿させる楽しさです。ユニコーン号で起った出来事の再現と、その記憶を語るハドックの現在を頻繁にカットバックさせたり、握手した手のアップから砂漠の映像へ、船が浮かぶ海原の映像から路面の水たまりに繋ぐなど、ユニークな編集手法も随所に見られます。

 特に、奇想天外なアイデアを盛り込んだ丘状の町におけるカーチェイスは、正に実写では不可能なショットの連続で、想像力の飛翔が感じられる、もの凄いシーン構成。同様に、クライマックスにおける二台のクレーンのバトルも、アクロバティックなキャメラ・ワークが頻出し、スピルバーグらしい映像センスが横溢しています。物理的な制約なしにキャメラを自由に動かせるのなら、きっとこんな映像が撮りたかったんだろうなという、理想の追求というか、創造性の発露がエキサイティング。

 この分野のパイオニアである弟分のロバート・ゼメキス監督とは違い、実写ではない事にこだわってか撮影監督を置いていませんが、現場でのスピルバーグは、手に持ったヴァーチャル・キャメラを動かし、構図やキャメラの動きを決めながら演技を付けていて、その意味では、彼自身が撮影監督を兼ねているようなものです。実写で言う、ライティングや色彩の美しさも印象的。ただ、前述のように、どこかスピルバーグらしいエキサイティングな高揚感や身体的な手応えが希薄な感じがするのは、彼があくまでアナログの人だという証拠と言えるでしょうか。

 ちなみにストーリーは、原作本の『なぞのユニコーン号』から『レッド・ラッカムの宝』に至るエピソードに、『金のはさみのカニ』からハドック船長との出会いの顛末を挿入したもの。過去の因縁が新しい世代に再び巡ってくるとか、探し求めていたものが結局振り出し地点で見つかるとか、意外に古典的な構成が目立つのは、良くも悪くも原作物ゆえでしょうか。映像に趣向が凝らされているため、物語が複雑すぎない方がいいという事かもしれません。

* スタッフ

 製作には、スピルバーグの片腕キャスリン・ケネディの他、助監督上がりのアダム・ソムナーの名前も並びますが、注目はやはり『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのピーター・ジャクソン監督が、共同でプロデュースを担当している所。ジャクソンは大の『タンタン』ファンという事で、ファン代表として『タンタン』にさほど詳しくないスピルバーグの補佐という形で参加したそうです。

 ジャクソンはセカンド・ユニットの監督も務めていますが、メイキング映像で実際の作業風景を見ると、役割分担としてはほぼ共同監督という感じです。彼はたった1週間ロスの撮影に参加してニュージーランドに帰った後も、CG変換された映像を確認しながら、スピルバーグの演出や俳優の演技にリアルタイムで細かくコメントしています。

 脚本のスティーヴ・モファットは、英国の有名なテレビ脚本家で、映画の仕事は基本的に断っているが、タンタンならという事で参加。ただし途中で他の仕事のために抜けたため、同じく英国のテレビ業界出身で映画でも成功を収めたエドガー・ライトとジョー・コーニッシュのコンビに引き継がれました。

 撮影監督は置いていないものの、照明が非常に美しいと感じられる場面が多いですが、これはコンピューター上で行われるためか、実に大勢のスタッフがクレジットされています。そこへ、ライティング・コンサルタントという名目でトップにクレジットされているのが、誰あろうスピルバーグ自身。しかし、本作の映像や色彩センスの良さを見るにつけ、スピルバーグは撮影監督としての才能も、相当にあるのではないかと思います、

 編集は実写と同様、マイケル・カーンが担当。ジョン・ウィリアムズの音楽は、コミカルなアニメ調からサスペンスフルな活劇調まで、さすがに幅広いスタイルを披露。一発で耳に残るようなインパクトの強いテーマ曲があればさらに良かったと思いますが、それは無いものねだりでしょうか。デュポンとデュボンの二人に付けられた音楽の、アコーディオンの伴奏にユーフォニウムという変わった組み合わせのオーケストレーションも、異国情緒とユーモアを誘います。

* キャスト

 主役タンタンを演じるのは、10代の時に『リトル・ダンサー』でブレイクし、ジャクソン作品『キング・コング』にも出演したジェイミー・ベル。身体能力に優れた人で、メイキング映像を観ていると、スタジオのあちこちに配置された台や鉄骨を、障害物競走みたいに上ったりくぐり抜けたりして撮影しています。同じく『ロード・オブ・ザ・リング』『ホビット』のシリーズと『キング・コング』でジャクソン監督の信望も厚い、アンディ・サーキスがハドック船長を演じています。

 敵役のサッカリンに、007シリーズやスピルバーグの『ミュンヘン』にも出演した、ダニエル・クレイグを配しているのは面白いキャスティング。デュポンとデュボンを演じるニック・フロストとサイモン・ペッグは、本作の脚本家コンビの出世作『SPACED〜俺たちルームシェアリング〜』の出演者で、脚本家としてもエドガー・ライトと共同で『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『宇宙人ポール』などに参加している、ユニークナ」コンビです。

 他では、『ハリー・ポッター』シリーズの妖精トビーの声や、『フロスト×ニクソン』などの名バイプレイヤー、トビー・ジョーンズがシルクを演じている他、悪徳パイロットを、スピルバーグ製作の『ツイスター』で悪役を演じたケアリー・エルウェスが担当しています。

 パフォーマンス・キャプチャーという手法は、関係者もうろうろしている散らかった現実的空間で撮影している上、相手役もキャラクターに似ていなかったりして、俳優にとっては想像力を駆使するのが大変かと思いますが、自分がどうCG変換されているか、背景と共にスクリーンで確認しながら演技できるのは利点と感じます。

* アカデミー賞

ノミネート/作曲賞

 

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