恐怖の館

Something Evil  (CBS Friday Night Movie)

1972年、アメリカ (74分)

         

 監督:スティーヴン・スピルバーグ

 製作:アラン・ジェイ・ファクター

 共同製作:ハーヴェイ・レムバック、デヴィッド・ナップ

 脚本:ロバート・クローズ

 撮影監督 : ビル・バトラー

 プロダクション・デザイナー:E・アルバート・ヘショング

 衣装:スティーヴン・ロッジ、アグネス・リヨン

 編集:アラン・ジェイコブズ

 音楽:ウラジーミル・セリンスキー

 ユニット・プロダクション・マネージャー:サム・マナーズ

 プロダクション・マネージャー:エドワード・O・デノールト

 助監督:ジャック・ロウ

 音楽監修:モートン・スティーヴンス

 出演:サンディ・デニス  ダーレン・マクギャヴィン

    ラルフ・ベラミー  ジェフ・コーリイ

    ジョニー・ウィテッカー  ジョン・ルビンステイン

    デヴィッド・ナップ  ローリー・ハガン

    カール・ゴットリーブ  スティーヴン・スピルバーグ

* ストーリー 

 ペンシルヴァニア州の人里離れた一軒家に引っ越してきた家族。この家では奇怪な出来事ばかりが起こり、一家の幼い一人息子は何かに魅入られたようになってゆく。

* コメント    

 後の『ポルターガイスト』にも影響を与えたと言われている、CBSの長編テレビドラマ。『LA2017』と共に、比較的安価でマイナー・メディアからDVD化もされている。VHS発売時の邦題は『ヘキサゴン』。

 形式的にはかなり典型的な幽霊屋敷物だが、襲ってくるのは幽霊ではなく悪魔なので、日本人にはあまり恐いという感覚の持てないホラーである。脚本は『エクソシスト』の2年前に完成していたが、スピルバーグは撮影中にそれを知り、両者が似通っている事に気付いて登場人物のタイプを敢えて変えたという。

 主人公に当たる母親の人物造型にかなり癖があり、明白な理由もなく、夫の通勤に2時間もかかるこの家を買えと迫り、引っ越して数日で異変に気付くと、「ここには住めない。家を売って」と迫る。後者の言動があるので、悪魔に魅入られていた訳ではないようである。演じるデニスがまた個性的な顔立ちで、何を考えているのか分からない放心したような表情が多いのが、これは山場の急展開の伏線なのだろうか。

 会話劇に奇妙な落ち着きと含蓄があり、演技中心のドラマ部分はなかなか健闘。プロットとしてはありがちな幽霊屋敷物である分、ダイアローグのやり取りに大人っぽい奥行きがあるのは好感触。ただ、それらが有機的に物語へ収束せず、雰囲気作りに留まる印象もある。

 演出は意欲的で、手持ちキャメラの移動撮影やロー・アングル、クローズ・アップなど、特に映像表現に関しては色々と攻めている。『ジョーズ』のビル・バトラーが撮影しているが、スピルバーグが「神の光」と呼んで後の作品にも多用した、強いライトで窓を照らし、人物を逆光で撮影する手法も効果的に使用されている。

* スタッフ/キャスト

 プロデューサーのファクターは、『ワン・ステップ・ビヨンド』という斬新なホラー・ファンタジー・シリーズを製作した人。脚本のロバート・クローズは『燃えよドラゴン』や『死亡遊戯』をはじめ、ブルース・リー関連作やカンフー映画を多数手掛ける異色のライター。撮影監督は、後に『ジョーズ』でも組むビル・バトラー。

 俳優は当時のテレビ映画としては破格で、母親役に『バージニア・ウルフなんかこわくない』でアカデミー助演女優賞に輝いたサンディ・デニス、夫にベテランの性格俳優マクギャヴィン、息子役のウィテッカーは連続ドラマ『ファミリー・アフェア』で知られる子役を起用。

 また、後に『ジョーズ』で脚本と出演を兼ねたカール・ゴットリーブも端役で出演している他、共同製作のデヴィッド・ナップやスピルバーグ自身も出演者にクレジットされている。

 

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