後の『ポルターガイスト』にも影響を与えたと言われている、CBSの長編テレビドラマ。『LA2017』と共に、比較的安価でマイナー・メディアからDVD化もされている。VHS発売時の邦題は『ヘキサゴン』。 形式的にはかなり典型的な幽霊屋敷物だが、襲ってくるのは幽霊ではなく悪魔なので、日本人にはあまり恐いという感覚の持てないホラーである。脚本は『エクソシスト』の2年前に完成していたが、スピルバーグは撮影中にそれを知り、両者が似通っている事に気付いて登場人物のタイプを敢えて変えたという。 主人公に当たる母親の人物造型にかなり癖があり、明白な理由もなく、夫の通勤に2時間もかかるこの家を買えと迫り、引っ越して数日で異変に気付くと、「ここには住めない。家を売って」と迫る。後者の言動があるので、悪魔に魅入られていた訳ではないようである。演じるデニスがまた個性的な顔立ちで、何を考えているのか分からない放心したような表情が多いのが、これは山場の急展開の伏線なのだろうか。 会話劇に奇妙な落ち着きと含蓄があり、演技中心のドラマ部分はなかなか健闘。プロットとしてはありがちな幽霊屋敷物である分、ダイアローグのやり取りに大人っぽい奥行きがあるのは好感触。ただ、それらが有機的に物語へ収束せず、雰囲気作りに留まる印象もある。 演出は意欲的で、手持ちキャメラの移動撮影やロー・アングル、クローズ・アップなど、特に映像表現に関しては色々と攻めている。『ジョーズ』のビル・バトラーが撮影しているが、スピルバーグが「神の光」と呼んで後の作品にも多用した、強いライトで窓を照らし、人物を逆光で撮影する手法も効果的に使用されている。 |