製作のザナック&ブラウンは、『スティング』などを製作した名プロデューサー・コンビ。若い世代の監督とも相性が良く、前者は後年、ティム・バートン作品も数多くプロデュースしています。テレビ映画しか監督経験のないスピルバーグの才能を買った先見の明だけでなく、興行的に振るわなかった本作の後で、『ジョーズ』の監督に再び彼を抜擢する(その際にディック・リチャーズ監督を降ろしています)なんて、いかにスピルバーグの才能に信頼を寄せていたかが窺われますね。 脚本を書いているバーウッドとロビンズのコンビはスピルバーグの旧友で、二人揃って『未知との遭遇』にチョイ役で出演している他、その後の映画でも、脚本執筆に際して様々なアドバイスを行っているそうです。又、ロビンズは『ニューヨーク東8番街の奇跡』や『アメージング・ストーリー』中の一話など、スピルバーグ製作の元で監督作もあり。 撮影は、ロバート・アルトマン監督から紹介されたという名手ヴィルモス・ジグモンド。ハンガリー出身の彼は、光量の少ない悪条件・悪天候をものともしない腕利きで、陽が落ちる寸前の夕闇みたいな空でさえ見事に背景として取り込んでいるし、照明なしの暗がりの場面や逆光の画面も随所に見られます。彼はスピルバーグと撮影開始前に3週間もテキサスを回ってロケ地を探し、その時には監督に、構想が甘すぎるのでもっと作品に鋭さを加えた方が良いと助言までしたそうです。 しかし、斬新なアングルを追求する傾向にあったスピルバーグはしばしばジグモンドにいさめられ、車のガラス越しの撮影を指示した時は、「誰の視点なのか説明しなければ撮影を続行できない」と言われてしまいました。「僕の、監督の視点だ」というスピルバーグに、「そいつは賢い。でも効果はないね」とジグモンド。結局スピルバーグは、ショットが常に何かを意味していなければならない事を学び、『未知との遭遇』に再びジグモンドを起用します。 『激突!』からは助監督のジム・ファーゴ、スタント・コーディネーターのケアリー・ロフティンが参加。本作で初めてコンビを組んだジョン・ウィリアムズの音楽も、オーケストラではなくハーモニカやギターを使って、カントリー風というか、やはりニューシネマ的なムードを志向しているように感じられます。ちなみにハーモニカ演奏はオランダの名手、トゥーツ・シールマンス。 編集のヴァーナ・フィールズは、スピルバーグの友人の作品、ジョージ・ルーカスの『アメリカン・グラフィティ』やピーター・ボグダノヴィッチの『ペーパー・ムーン』を編集した人で、次作『ジョーズ』にも参加。スタッフに食事を用意したりして母親のような雰囲気があり、“マザー・カッター”と呼ばれてとても慕われていたそうです。 |