E.T.

E.T.:The Extra-Terrestrial

1982年、アメリカ (115分)

2002年、特別版公開 (120分)

         

 監督:スティーヴン・スピルバーグ

 製作:スティーヴン・スピルバーグ、キャスリン・ケネディ

 共同製作:メリッサ・マティソン

 プロダクション・スーパーヴァイザー:フランク・マーシャル

 脚本:メリッサ・マティソン

 撮影監督 : アレン・ダヴィオー , A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:ジェームス・D・ビッセル

 衣装:デボラ・スコット

 編集:キャロル・リトルトン

 音楽:ジョン・ウィリアムズ

 ロケーション・マネージャー:リチャード・ヴェイン

 製作経理 : ボーン・ラドフォード

 キャメラ・オペレーター:ロバート・エルスウィット

 プロダクション・イラストレーター : エド・ヴェロウ

 E.T.の声デザイン:ベン・バート

 映像効果編集総指揮: コンラッド・バフ

 特殊視覚効果:デニス・ミューレン

 E.T.クリエイト:カルロ・ランバルディ

 出演:ヘンリー・トーマス  ドリュー・バリモア

    ディー・ウォーレス  ピーター・コヨーテ

    ロバート・マクノートン  C・トーマス・ハウエル

* ストーリー 

 地球植物の調査のため、森の中に降りた宇宙船から現れた異星人たち。彼らの調査は人間たちの登場によって中断される。しかし急いで飛び立った宇宙船に、一人乗り遅れた異星人がいた。近くに住む少年エリオットは、裏庭でその異星人と遭遇し、最初は驚くが彼をかくまう事にする。兄と妹も巻き込んで異星人との交流が始まるが、ほどなくして政府関係者達がエリオットの家にやってくる。

* コメント   *ネタバレ注意!

 これまでのキャリアでも充分に奇跡の成功者であったスピルバーグが、さらにメガヒットを生み出した伝説的作品。劇中の象徴的なショット、月を背景に宙を飛ぶ自転車の映像(本物の月で撮影されています)は、後にアンブリン・エンターティメントのロゴに使用されました。世界中で愛された映画で、今でもスピルバーグ作品のベストに挙げる人は少なくありません。勿論、素晴らしい作品ではありますし、好きな場面もたくさんあるのですが、熱狂的にベストワンに推す人が多い現実に、個人的には長らく「それほどでは…」という気持ちもありました。すみません。

 しかしスピルバーグの非凡なセンスは映画のそこここに横溢しており、その才能には驚かされます。まずは冒頭、夜闇の中でE.T.を追う人間達を、シルエットと懐中電灯の光だけで表現したポエジーと幻想味はいかがでしょう。当初の演出プランでは、大人の俳優は最後まで腰から下しか映さないつもりだったそうですが、ここはその名残りが見られるシーンだといえますね。ちなみに出来上がった映画でも、大人のクローズアップ・ショットは母親メアリーを除けば後半登場するキーズが最初です。母親は離婚の痛手で子供返りしているという設定で、手持ち無沙汰にロウソクの火を消そうとする子供っぽくもアンニュイな佇まいなど、印象的なショットも多々あり。

 その後にも又、詩情豊かな美しい場面があります。エリオット少年が理科の授業中に解剖用のカエルを逃がして大騒ぎになる一連のシークエンスですが、ここは極力セリフを排して音楽をフィーチャーし、サイレント映画風の味わいを醸しています。窓から子供達の腕が一斉に突き出されるショット、エリオット少年が少女にキスをするショット、連れ出されて遠ざかるエリオット少年を少女の足元越しに撮影したショットなど、想像力豊かなロマンティックな映像によるモンタージュは、全編中の白眉と言えるでしょう。

 そして、素晴らしいエンディング。人物の顔を仰角でクローズアップにするだけでこれほどの感動を盛り上げる事が出来るなんて、凄い事だと思います。オペラティックなまでに荘厳なこのラストは、スピルバーグの仰角クローズアップの集大成だと言えますが、ヤヌス・カミンスキーを撮影監督に固定した90年代以降は、この手法も影を潜めてゆきます。ちなみにこのスタイル、J.J.エイブラムズ監督の『SUPER8』で大々的にオマージュが捧げられ、映画ファンを感涙させました。

 勿論、幻想的なムードに溢れたハロウィンの場面や、有名なフライング・シーンなど、傑出した場面は他にも枚挙に暇がありません。母子家庭の背景を垣間見せる前半の食卓の場面なども、忘れ難い印象を残すドラマティックなひと幕です。ただ、ストーリー自体が実にシンプルかつ直線的なものなので、あまりに熱烈に支持されると、「スピルバーグなら他にも斬新な映画がたくさんあるけどなあ」と思ってしまうという事でしょうか。

 本作は『未知との遭遇』から派生したアイデアを元にした作品で、この二作の間には幾つかの共通点があります。まず、宇宙空間ではなく地球上を舞台にしたSFである事、人類に対して友好的な地球外生命体を描いている事、そして、難解な学術用語をタイトルにしている事(E.T.とは地球外生物を意味するTheExtra-Terrestrialの略称)。逆光を多用した立体的な光の使い方や色彩感覚にも似た雰囲気があり、音楽と映像の一大スペクタクルたる大団円を展開する点でも、この二作は姉妹編と言えるでしょう。

 本作はカンヌ映画祭に出品され、当地では異例ともいえる熱烈なスタンディング・オベーションを受けた事で、スピルバーグとケネディ、マーシャルを驚かせました。しかし興行的な大成功やカンヌでの歓迎について、スピルバーグは「ユニヴァーサルが製作費を回収できたらそれで成功だと思っていた。私はこの作品を作りたかっただけだ。それで満足だった。だから他の事は全て、嬉しいおまけだったんだ」と語っています。

 2002年の20周年再公開時には、新しいヴァージョンが登場。ここでは大人達が手にしている銃がCGでトランシーバーに変わり(この映画に銃を出した事を、スピルバーグはずっと悔やんでいたそうです)、E.T.の動き(特に口の動き)も修正、自転車のフライング・シーンや宇宙船着陸の場面など幾つかの特殊効果に最新技術を加えた他、82年公開時ではカットされた、E.T.がバスタブに浸かる場面とハロウィンの暴動場面が復活しました。

* スタッフ

 製作は、前作でスピルバーグの助手として活躍したキャスリン・ケネディが大抜擢。各部門のトップに女性スタッフが多い本作ですが、彼女にとってはこの後のスピルバーグ映画を背負って立つ一歩となったプロデュース第1作です。前作のプロデューサー、フランク・マーシャルも製作監修の名義で参加。こういった役割についてケネディは当時、こう発言しています「肩書きなんてどうでもいいんです。私達は自分達を一つの小さな家族として考えるのが好きで、何でも一緒にやりますよ」。

 脚本のメリッサ・マティソンも、共同製作者として主に子役達のリハーサルを務めました。物語の冒頭と中間、最後の部分しか思いついていなかったスピルバーグは、当時大好きだった『ワイルド・ブラック/少年の黒い馬』という映画を思い出します。その映画の脚本家マティソンはハリソン・フォードの奥さんで、『レイダース』のセットにも出入りしていました。本作のプロットに魅せられた彼女は、たった8週間で第1稿を書き上げます。様々な脚本家が関わるスピルバーグ作品では珍しい事ですが、「これは今までに読んだ脚本の中で最高の第1稿だ」という一言で、何とこれを最終稿として撮影が開始されました。

 スピルバーグは本作のアイデアを思いついた初期段階(まだ“A Boy's Life”というタイトルでした)に、ボブ・ゲイルとロバート・ゼメキスに脚本の相談をしていますが、出来上がった映画にもゼメキスのアイデアが残っています。アクターズ・スタジオの番組に登場したスピルバーグがゼメキスの口真似で語った所によると、クローゼットの中で人形に混じってE.T.がいる場面は、ゼメキスの案との事。

 撮影監督は、短編『アンブリン』で組んだアレン・ダビオーが担当。昔の仲間に借りを返した形ですが、無条件に採用された訳ではなく、他の候補者と一緒にテスト・フィルムを提出するよう、スタジオからしつこく要求されたそうです。スピルバーグ自身も、リドリー・スコット監督のスタイルを研究するよう指示したそうですが、大量のスモークで逆光の立体効果を生かす映像スタイルは確かにスコットの手法を継承していて、ファンタジックなカラー・パレットと共に、当時のスピルバーグ作品を視覚的に象徴するものとなりました。室内や夜のシーンを始め、光のコントラストを生かして全体をシックなトーンに抑えているのも美しい効果です。

 プロダクション・デザイナーのジェームズ・ビッセルも、次作『トワイライトゾーン』に続投している他、他のスピルバーグ製作作品も担当している人で、スピルバーグの原風景とも言える郊外の住宅地を巧みに背景に取り込んでいます。編集はなぜか例外的にマイケル・カーンではなく、『白いドレスの女』のキャロル・リトルトンが担当。カーン以外でスピルバーグ監督作を編集したエディター二人が、どちらも女性というのは興味深い所です。

 ジョン・ウィリアムズによるテーマ曲は世界的ヒットを飛ばしましたが、壮大でクラシカルなラストシーンの音楽は掛け値なしに素晴らしい傑作。時代錯誤と言えるほどのロマンティックな盛り上がりで映画が幕を閉じた後、エンド・クレジットのロールと共に、ソロ・ピアノがモダンな和声でアルペジオを弾き始める所は、思わずはっとさせられるような効果があります。

 E.T.のデザインと製作は『キングコング』『エイリアン』で二度アカデミー賞を受賞し、『未知との遭遇』のエイリアンも手掛けたカルロ・ランバルディ。機械操作の人形と、人間が中に入るモデルの組み合わせで撮影されました。必ずしも可愛いとは言えないけれど、さりとてグロテスクでもなく、脚本と演出で愛らしく見えるキャラクター・デザインは絶妙なさじ加減でした。デニス・ミューレン率いるI.L.M.も宇宙船やフライング場面の特殊効果を担当。映像効果編集を後にジェームズ・キャメロン作品で名を挙げるコンラッド・バフが指揮、キャメラのオペレーターを、後に『マグノリア』などポール・トーマス・アンダーソン作品で撮影監督を務めるロバート・エルスウィットが担当しています。

* キャスト

 主役のエリオット少年を演じたヘンリー・トーマスの豊かな感受性には目を見張るものがありますが、それは既にオーディションで監督やプロデューサー達を圧倒したものでした。この時の映像はDVD等の特典にもよく入っていますし、テレビのバラエティ番組でも放送された事があるので、ご存知の方も多いかもしれません。スピルバーグは、友人の宇宙人をNASAの役人が連れ去りに来たという設定で、彼に即興の芝居を求めます。即座に気持ちが入り、涙を流しながら「彼は友達なんだ!」と叫ぶヘンリー君の映像は何度見ても感動的で、その部屋にいた大人達全員が泣いたそうです。この映像には、「君に決まりだ」というスピルバーグの声も入っています。

 一方、ヘンリー君よりも遥かに人気が出た末っ子役のドリュー・バリモアちゃんは、同時期に製作された『ポルターガイスト』のオーディションを受けにいって、スピルバーグから「君はこっちじゃない」と当役に抜擢されたとの事。又、あまり目立ちませんが、翌年に『アウトサイダー』でブレイクした人気俳優C・トーマス・ハウエルが、トム・ハウエル名義で少年グループの一人を演じています。本作は脚本通りの順番で撮影され、子役達には先の展開も知らされていなかった為、後半部分の彼らの反応は演技ではなく、本当にショックを受けていたそうです。メイキング映像では、本番以外の時もずっと悲しそうに泣いているバリモアちゃんの姿が確認できます。

 大人では、一家の母親を演じたディー・ウォーレス(・ストーン)が好演。子供達の前では気丈に振るまいながらも、夫が出て行った痛手から立ち直れずにいる彼女の姿は心に沁みます。『ハウリング』や『クジョー』など、ホラー映画のファンにはお馴染みの女優さんですが、スピルバーグ映画の常というか、その後もスター女優にはなりませんでしたね(後年、ロバート・ゼメキス製作/ピーター・ジャクソン監督の『さまよう魂たち』で鬼気迫る演技を披露しています)。彼女は、娼婦役が多かった自分にこの役をオファーしたスピルバーグの慧眼を絶賛していますが、後に衝突して険悪な関係になったと噂されました。

 政府の関係者キーズを演じるピーター・コヨーテは、スピルバーグが会った瞬間から好印象を持ったという俳優。『レイダース』のオーディションで部屋に入ってきた途端に転び、そこら中の物をひっくり返したそうですが、その不器用な佇まいが、やがて子供達の気持ちに同調しはじめるキーズの役柄にぴったりだったのでしょう。その後もロマン・ポランスキーやバリー・レヴィンソン、ブライアン・デ・パルマ監督作など、妙な所でちょこちょこと顔を見かける役者さんです(インパクトの強い名字は、実は芸名)。

 又、スピルバーグと関係を噂された事もあるデブラ・ウィンガーが、ハロウィンの街角で子供達にイタズラされる役で変装してカメオ出演しているそうですが、私は何度観ても確認出来ませんでした。又、彼女はE.T.の声の仮トラック録音も依頼され、ほぼ全てのセリフを吹き込んだそうですが、出来上がった映画にどこまで使用されたは言及されていません。スピルバーグ映画ではお馴染みのスタントマン、テッド・グロスマンも参加。さらに本作では校長先生をハリソン・フォードが演じ、シルエットで登場する予定でしたが、残念ながらカットされてしまいました(DVDの特典映像ではこのシーンの一部が観られます)。

* アカデミー賞

 ◎受賞/音響賞、音響効果編集賞、作曲賞、視覚効果賞

 ◎ノミネート/作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞

 

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