かなりの不評を買った二作目とは違い、意外に高く評価され、興行的にも成功した三部作完結編。1作目はユダヤ教、2作目はヒンドゥー教と関わった当シリーズですが、大方の予想通り、本作ではキリスト教の聖杯にまつわるレイダー(宝探し)達の物語が描かれます。当初の予定では、インディと父親が聖杯を守る騎士となり、シリーズの環が閉じられる予定だったといいますが、結局はスタジオの圧力に屈して続編の可能性が残されました(その結果、19年後に珍妙な4作目が製作される事になる訳です)。 少年時代のインディや、彼の父親が登場し、それぞれをリヴァー・フェニックス、ショーン・コネリーという話題性の強い俳優が演じるなど、どこかお祭りイベント的なムードの漂う企画で、それらは確かに楽しいサプライズと言えなくもありません。テイストをヨーロッパ調に戻し、ナチス(今回はヒットラーも)と1作目のサブ・キャラクター2人(マーカスとサラー)を復活させた点も、シリーズのあり方としてはバランスの取れた軌道修正に思えます。シニアの登場によってコメディ色が強くなった点は好みを分つかもしれませんが、その分ドラマ重視で、大人っぽいテイストになったとも言えます。 しかし映画の後半は、過去作品のハイライトをなぞるような雰囲気があり、子供版インディ・ジョーンズと言える『グーニーズ』も含め、過去作の自己模倣というと言い過ぎかもしれませんが、作品のイメージだけが独り歩きして形骸化したような印象も否めないものです。特に顕著なのは、シリーズ定番とも言えるクライマックスの対決場面。ここは設定も演出もほとんどセルフ・パロディみたいで、インディ・シリーズ最新作というより、シリーズに影響を受けた亜流作品を観るかのよう。ジョン・ウィリアムズの音楽も、前二作のインパクトと高揚感を欠きます(オスカーにノミネートされてますけど)。 又、個々のシーンの面白さに比して、ストーリーとしては今、何が起っているのか分かりにくい場面も多く、再び登場するナチスも1作目と較べるとやや戯画化されています。演出自体も生気に乏しい感じがあり、戦車を使ったアクション・シークエンスなど、何度観ても私には非常に冗長と感じられます。何というか、映画的インスピレーションに欠けるという感じでしょうか。要は、映像の律動感とダイナミズムにおいて、本作はやや一本調子に感じられるわけです(同じ事が次作『オールウェイズ』にも言えます)。全体で127分もありますから、前二作同様、二時間以内の尺に収めるべきだったのかもしれません。 勿論、見どころはあちこちにあって、オープニングは(007シリーズで観たような既視感はあるものの)疾走感満点のアクションになっているし、ヴェニスのシーンもやはり007映画のような雰囲気で、美しい風景とスリリングなアクションの対比が痛快。又、嵐の海のシーンは、画面のデッサンに独特の凄味があります。インディと父のやり取りもなかなか楽しいものだし、女性キャラクターに存在感がないのもスピルバーグ映画の常で、今さら批判するには当たりません。インディが蛇を嫌う理由やムチを使うきっかけなど、種明かし的な場面が入るのもハリウッド流エンタメの王道。本作が三部作で一番好きだというファンも多いようなので、結局は好みの問題なのでしょう。 |