トム・クルーズの熱意と共感溢れる芝居は素晴らしいです。スターのイメージに捉われず、自分がこれと思う優れた作品に関わろうという強い意志が投影されているし、ファンは挫折した情けない主人公の姿に彼の挑戦を見るかもしれません。彼の演技に共通する幾つかのパターン、両手を使った決めポーズや体の動かし方の癖などは、キャラクターとの一体化を阻害する面も否めませんが、それでも観客を引き付ける事ができるのは実力の証でしょう。 本作は、レニー・ゼルウィガーが出演した初のメジャー作品でもあります。彼女の演技がいつも素晴らしいと思うのは、感情の発露を身体や表情の直截な動きに、すこぶる魅力的に表す事が出来る所。俳優ならそんな事できて当たり前と思われるかもしれませんが、現実に多くの役者が型やスタイルで演じているようにしか見えないのも事実です。トム・クルーズの演技にさえ、そういう傾向が見られるくらいですから。ゼルウィガーの演技は実に率直で、本当に“そういう人”がキャメラの前にいて、泣いたり笑ったりしているみたい。 キューバ・グッディングJrは、過去に演じてきたシリアスな役柄から一転、成り行きが少し心配になるほど軽いタッチの芝居ですが、ジェリーと成功を掴んだ後の場面など、エモーショナルな演技が胸を打ちます。トム・クルーズとは『ア・フュー・グッドメン』でも共演済み。 クロウ作品の常として脇役はみんな生き生きとしており、『ツインズ』のケリー・プレストンや『ベートーベン』のボニー・ハント、『スタンド・バイ・ミー』で子役の一人だったジェリー・オコネル、そして何と言っても奇跡的な演技を見せる5歳のジョナサン・リプニツキーと、個性的で人間臭いキャラクター達に見事、息が吹き込まれている点は見逃せません。主人公のライヴァルを演じたジェイ・モアも、コメディアンの資質を生かして存在感を示し、本作出演後にはオファーが殺到したといいます。 又、前述したようにプロ・フットボール選手や解説者など有名スポーツ人が多数実名で出演している他、音楽界からも、イーグルスのグレン・フライがアリゾナ・カージナルズのオーナーを演じていたり、ローリング・ストーン誌の発行人ジャン・ウェンナーが主人公の上司スカリー役で出演しています。クロウ組ではお馴染みのエリック・ストルツも独身サヨナラ・パーティー会場のオーナー役、監督の実母アリスがバツイチ女性グループの一人で出演(彼女は以降のクロウ作品にも出演を続けています)。 |