製作総指揮のダニー・ウルフは、『サイコ』に続くサント作品で、続く『ジェリー』三部作や短篇映画などもプロデュース。ジョナサン・キングは、後に『リンカーン』『ブリッジ・オブ・スパイ』とスピルバーグ作品を製作した他、『プロミスト・ランド』で再度サントと組んでいます。製作のローレンス・マークは、『ザ・エージェント』『恋愛小説家』『ワーキング・ガール』など、都会的な映画をたくさん作っている人。 脚本のマイク・リッチは、ラジオ局でニュース・アンカーをしていたという異色の経歴の持ち主で、ポートランドのラジオ局で米国作家をテーマにしたインタビューを行っていた時に本作の着想を得て、脚本を執筆。映画芸術科学アカデミーが後援するコンペに出品して、最終選考の5本に残った事が映画化への道となりました。 撮影のハリス・サヴィデスは、これがサントとの初タッグ。本作は基本的にオーソドックスな映像スタイルですが、この後に数作でサントと組み、実験的な撮影手法を展開してゆきます。当時はデヴィッド・フィンチャー監督作『ゲーム』が知られていたくらいの新進でしたが、後にソフィア・コッポラやウディ・アレン、リドリー・スコットに起用される売れっ子になりました。 プロダクション・デザイナーのジェーン・マスキーは、『摩天楼を夢みて』『恋人たちの予感』などでニューヨークのロケ経験も豊富な人。本作もマンハッタンとブロンクスでロケーション撮影を行っていますが、カナダのトロントでも一部を撮影。フォレスターのアパートのセットの他、マディソン・スクエア・ガーデンもオンタリオ州にある競技場で代用、主人公の家もトロントで撮影しています。 衣装デザイナーのアン・ロスは、古くは『真夜中のカウボーイ』『イナゴの日』から、『グッバイガール』『帰郷』『ヘアー』『ガープの世界』『プレイス・イン・ザ・ハート』『存在の耐えられない軽さ』など、数々の名作を手掛けて来たベテラン。『イングリッシュ・ペイシェント』でアカデミー賞に輝いています。 編集はデンマークの映画監督集団が提唱する“ドグマ95”の二作品、『ミフネ』と『セレブレーション』を手掛けたヴァルディス・オスカルドッティア。奇抜な人選がいかにもサントらしいですが、結果的にオーソドックスな編集に仕上がったのは、それでも狙い通りなのでしょうか。リーレコのミキサーには、後にサント作品の音響デザインを手掛けるレスリー・シャッツと共に、サント自身も参加。 音楽は、特定の作曲者がクレジットされていませんが、マイルス・デイヴィスをはじめ、オーネット・コールマンなどジャズの曲を使用。ジャマールがフォレスターの部屋から逃げ出す場面など、モダン・ジャズのBGMが斬新な効果を挙げています。スコアはビル・フリゼールが作曲。エンド・クレジットでは、『オズの魔法使い』の“オーバー・ザ・レインボウ”とルイ・アームストロングの“ホワット・ア・ワンダフル・ワールド”をミックス・アレンジした主題歌が感動を呼びます。 |