パリ、ジュテーム (オムニバス)〜 マレ地区

Paris Je T'aime 〜 Le Marais

2006年、フランス (6分)

 監督:ガス・ヴァン・サント

 製作総指揮:クリス・ボルズリ、ジル・コーサッド

       ラフィ・ショードリー

 製作: クローディー・オサール、エマニュエル・ベンビー

 共同製作:ブルクハルト・フォン・シェンク、アンリ・ジャコブ

      ステファン・ピエシュ、マティアス・バティアニ

 脚本:ガス・ヴァン・サント

 撮影監督: パスカル・ラボー

 プロダクション・デザイナー:フィリップ・デレスト

 衣装:オリヴィエ・ベリオ

 音楽:ピエール・アデノ

 出演:ギャスパー・ウリエル  イライアス・マッコネル

    マリアンヌ・フェイスフル

* ストーリー 

 印刷所にやってきた、英国の女性客と通訳のガスパール。店主と女性客が話し込んでいる間、ガスパールは下働きの青年エリに目を留める。「君の顔に見覚えがある」「前世で会ったんじゃないか」とフランス語で熱く語りかける彼は、エリに電話番号を渡して帰ってゆくが、エリは店主に英語で話しかける。

* コメント  

 『アメリ』のクローディー・オサールが製作した、パリの18の地区で世界各国の映画監督と俳優達が各5分間の短編を繋いでゆくオムニバス、『パリ、ジュテーム』の一話。『アメリ』が素晴らしい体験だったため、もう映画製作はしないと考えていた彼女の元に、『ラン・ローラ・ラン』『パフューム』のトム・ティクヴァ監督が短篇を持ち込んだのが始まりで、これをパイロット版としてあちこちにプレゼン。最初に手を上げたコーエン兄弟篇(偶然かどうか、『アメリ』の撮影監督を起用しています)を皮切りに、オリヴィエ・アサイヤス、ヴィンチェンゾ・ナタリ、ウォルター・サレス、諏訪敦彦、ウェス・クレイヴン、アレクサンダー・ペイン等、ユニークな面々が集結しました。

 サントはやや長めの6分に仕上げていますが、それでもほんの一瞬で終ってしまう感じ。室内で言葉の通じない若者二人のやりとりがあって、その後、通りに出たマッコネルが町を疾走する映像に音楽が被さるという、長めのCMみたいなスタイリッシュな質感です。あまり説明的でない所と、最後の急展開が爽やかで、それも観る人によって自由に解釈できる感じは、いかにもサント作品といった所でしょうか。

 マレ地区は、ブティックや現代アートのギャラリーが多いだけでなく、パリで最もゲイが多い地区との事で、その両方を脚本に盛り込んで、過去のサント作品とも通底する作品になっているのはさすが。又、ガスパールがカート・コバーンに言及するなど、前作『ラストデイズ』への目配せもあり。最後にエリが走り抜けるのは、パリで最も美しいと称されるヴォージュ広場です。

* スタッフ/キャスト

 スタッフは基本的にオムニバス全体で共通ですが、美術と撮影監督は各監督が自由に起用しているようです。撮影のラボーは、ヴィム・ヴェンダース監督の『エンド・オブ・バイオレンス』他数作の経歴しかないようですが、サントについてはこう述べています。「ガスが望んでいるのは、役者と至福の時を過ごす事で、キャメラと役者の間にもそんな瞬間がある。キャメラは万年筆と同じで、ガスのそれは研ぎすまされている。演出がとても緻密なんだ。大抵は任せてくれるが、大きな機材を使うのは嫌がるね。その方針に従うのが大原則だ」。

 キャストは、『かげろう』『ロング・エンゲージメント』などフランスで人気の高いギャスパー・ウリエルと、『エレファント』のイライアス・マッコネル。店主役は、ゴダールの『メイド・イン・USA』や『マリー・アントワネット』にも出演しているマリアンヌ・フェイスフルです。ウリエルはサントについて、「仕事の進め方が速く、必要最低限のショットしか撮らない。捨てカットも撮らず、決して“保険”を掛けないんだ」と賞賛しています。

 

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