『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』『ジェリー』に続き、再度マット・デイモンが執筆したシナリオをサントが映画化。やはりデイモン自身が主演しています。しかし、共同執筆者がそれぞれ違うせいか(どれも共演者ですが)、作品のテイストが全て異なっているのがユニークで、そこには同時に、デイモンの脚本家としての多様な資質も表われています。 本作は、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のような感動ドラマではないし、『ジェリー』のようなスケッチ風のスタイルでもなく、主人公がある田舎町で行う営業活動の進展と挫折を、あくまで静かに、淡々と描くもの。ただ、恋愛ドラマの進展が最優先に来ない所は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』と通底しています。 サント作品の常として、視点が中立に置かれているのは変わらない所で、住民や環境団体の抵抗を描きながらも、それを進める立場の主人公達は決して悪人には見えないし、いずれの立場や主張もあくまでさらりと示されています。後半である事実が示され、主人公は決断を下す事になる訳ですが、それも殊更ドラマティックに強調されるのではなく、むしろ、資本主義社会ではよくある駆け引きの一例という程度のドラマ・メイキングではないかと思います。 デイモンは「答えるというより、問いかける映画。はっきりとした答えを与えてくれる映画じゃない」と言っていますが、それで良いと思います。大手サイトでサント作品の利用者レビューを覗いてみると、一番多いのが「結論を避けている」「観客に丸投げだ」という批判です。私はしかし、彼の作品が何らかの答えを提示したからといって、観た人がすっきりしたり、満足したりするとは思いません。本作には、人々の生活をいわゆる「神の視点」からそっと見つめる映像が何度か挿入されますが、その視線はそのまま、作り手側の中立の立場を表しているように感じます。 サント作品のテイストには、自然派製品のような独特の優しい手触りがあるので、こういう題材にはうってつけと言えるでしょう。本作では、メイン・スタッフが次世代の若手に一新された感もありますが、撮影のサンドグレンと組んだヴィンテージ風の映像スタイルは、過去のサント作品のイメージとも、脚本のテーマとも合致しています。流れる雲の映像も健在。 |