1941

1941

1979年、アメリカ (118分)

         

 監督:スティーヴン・スピルバーグ

 製作総指揮:ジョン・ミリアス

 製作:バズ・フェイトシャンズ

 共同製作:ジャネット・ヒーリー、マイケル・カーン

 脚本:ロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイル

 (原案:ロバート・ゼメキス&ボブ・ゲイル、ジョン・ミリアス)

 撮影監督 : ウィリアム・A・フレイカー, A.S.C.

 プロダクション・デザイナー:ディーン・エドワード・ミッツナー

 衣装:デボラ・ネドールマン

 編集:マイケル・カーン

 音楽:ジョン・ウィリアムズ

 プロダクション・コーディネーター:ラタ・ライアン

 第1助監督:ジェリー・ジースマー

 ジョン・ミリアスの助手:キャスリン・ケネディ

 出演:ダン・エイクロイド  ジョン・ベルーシ

    ナンシー・アレン  ロバート・スタック

    ティム・マシソン  三船 敏郎

    ネッド・ビーティ  ロレイン・ゲイリー

    ウォーレン・オーツ  マーレイ・ハミルトン

    トリート・ウィリアムズ  ボビー・ディッシッコ

    ダイアン・ケイ  ウェンディ・ジョー・スパーパー

    スリム・ピケンズ  エディ・ディーゼン

    クリストファー・リー  ジョン・キャンディ

    フランク・マクレー  ペニー・マーシャル

* ストーリー 

 1941年12月13日、カリフォルニア沖に羅針盤の故障で迷い込んだ日本軍の潜水艦が出現する。彼らの目標はハリウッドだったが、勘違いでただの田舎町を攻撃。真珠湾攻撃からまだ6日しか経っていないこの時期、カリフォルニアの住民はクリスマスの準備に追われながらも大混乱に陥る。

* コメント    

 興行面でも世評でも、スピルバーグ初の失敗作。それも膨大な製作費を掛けた途方もない大失敗作として悪名高い映画で、やれ「笑えない」だの「騒々しいだけ」だの散々酷評されたものですが、私はこの映画、昔から結構好きでした。もっとも、世代的にリアルタイムでは観ておらず、この映画の事を最初に知ったのはあるテレビ番組。SFXという言葉が注目されはじめた80年代中頃、ホラー映画の特殊メイクやSFの合成処理など、映画の特撮をクローズアップした特番が時々あって、その中でよく、軸を外れた観覧車が桟橋を転がって海に落ちる本作の一場面が取り上げられていたのです。

 公開当時は、『ジョーズ』『未知との遭遇』で世間を驚かせた新鋭が次は何を撮ったかと、誰もが興味津々だったに違いありません。回答は“戦時の混乱を描いたコメディ”でしたが、大規模な仕掛けが多い割に軽妙なテンポが出ず、ギャグも軒並み空回りする印象で、コメディとしては確かに失敗しているようです。いかなスピルバーグ・フリークでも、本作を真正面から擁護する事は難しいかもしれません。恐らく問題は、群像劇が散漫でドラマの焦点が定まらない事で、一つでも軸となる力強いストーリーがあれば良かったのでしょうね。前後して公開された『アニマル・ハウス』や『ブルース・ブラザーズ』など、コメディに関しては(数年後に損な役回りを演じる事になる)ジョン・ランディス監督の方が遥かにセンスが良い、というのが正直な感想です。

 けれども私はというと、普通に映画として、本作を面白いと思うのです。スピルバーグのフィルモグラフィの中でもひときわ異彩を放つ怪作として、少なくとも『カラーパープル』や『太陽の帝国』よりはよほど親しみが持てます。どちらかというと、コメディ色がさほど出ていない場面は概ねうまく行っているようです。例えば、ダンス・ホールで繰り広げられる喧嘩のシーンは、役者達のアクロバティックなアクション、音楽とキャメラをシンクロさせた音楽的な編集が見事だし、ビル群の谷間を駆け抜ける飛行機のチェイス・シーン、前述の観覧車のシーンも、当時のミニチュア技術の粋を存分に堪能できる楽しいシーンです。

 逆に、これは許容が難しいと思えるのが、冒頭の『ジョーズ』のセルフ・パロディ、空港での爆発シーン、三船敏郎を始めとする日本人キャストが中心となった潜水艦のシーン辺りでしょうか。これらのシーンの空回り感は、他の場面にすら悪影響を与えてしまっている気がします。演出のタッチ、特に役者の芝居が重すぎるのも問題です。

 スピルバーグは後にスペシャル・エディションの特典映像で、「ヨーロッパでは評価された。時代に早すぎたのだと思う。混乱の原因は、自分が作品に対するヴィジョンを持っていなかった事。ビッグバンド風のナンバーを8つ入れて、ミュージカルにしようとしたりした。作者のゼメキスが監督すべきだったが、当時の彼はまだ監督経験がなかった」と自己分析しています。ちなみにこのスペシャル・エディションのLDボックス、充実した特典映像と145分の完全版本編が収録されたファン垂涎のアイテムですが、DVDでは本編(完全版)しか収録されていないのが無念の限り。是非とも完全版/劇場公開版と映像特典を全て収録したブルーレイ化を熱望します。

 時に、そのゼメキス曰く「この映画を誇りに思っている。責任は感じたが、三船敏郎とクリストファー・リー、スリム・ピケンズが一つの画面の中にいるだけでも楽しいじゃないか。シニカルなブラック・コメディを意図していたが、配役や演出の関係でスクリューボール・コメディに変わってしまった」。共作者のゲイルも「過小評価されている作品。コロムビア、ユニヴァーサル両会社は元は取っているし、失敗作ではない」と語っています。膨大な製作費に恐れを成し、リスクを分け合った両メジャー・スタジオですが、期待されたメガヒット、つまり前二作が成し遂げた歴史的興行収入に及ばなかったというだけで、収支はそこそこ黒字だった訳です。

* スタッフ

 本作は、南カリフォルニア大学の同窓生でスピルバーグの友人だったロバート・ゼメキスとボブ・ゲイルが、同大の先輩ジョン・ミリアスの監督作として企画したものが発端です。製作のバス・フェイトシャンズも、『デリンジャー』『ビッグ・ウェンズデー』とミリアス作品をプロデュースしてきた人。ゼメキスは本作の前年に公開された『抱きしめたい!』で監督デビューしていますが、これはスピルバーグの初プロデュース作ながら興行的に失敗し、ミリアスも製作に加わった2作目『ユーズド・カー』も振るわず。スピルバーグ&ゼメキス・コンビの成功は、結局『バック・トゥ・ザ・フューチャー』まで待たなくてはなりませんでした。

 撮影監督のウィリアム・A・フレイカーは、『ローズマリーの赤ちゃん』『ミスター・グッドバーを探して』など、数々の名作で手腕を発揮してきたベテランで、前作『未知との遭遇』でも追加撮影を担当。スピルバーグは、従来のケバケバしいハリウッド製コメディの常識を覆すべく、フレイカーに照明を抑えるよう求め、スモークを多用したといいます。何しろ徹底的に酷評された映画ですから、それでもオスカーにノミネートされているのは大した仕事ですね。

マット・ペインティング(背景画)の名匠マシュー・ユリシッチも、前作に続いて参加。編集のマイケル・カーン、音楽のジョン・ウィリアムズも引き続きの参加で、以降固定スタッフとなりました。ウィリアムズが書いたマーチは陽気で楽しく、さすがに後のレイダース・マーチほど有名にはならなかったものの、きっとあなたも映画を見終わった後、繰り返し口ずさんでしまう事でしょう。

 本作は、後にアンブリンの社長となる辣腕プロデューサー、キャスリン・ケネディがスピルバーグと初めて仕事をした作品でもあります。記念すべき彼女の初クレジットは「ジョン・ミリアスの助手」。サンディエゴのテレビ局プロデューサーだった彼女は当初、特殊効果のシーン・ナンバーを付ける仕事で雇われますが、混乱を極めたスピルバーグのオフィスに仰天。封筒の裏やナプキンなど、ありとあらゆる紙切れにアイデアのメモがあるのを一日がかりで整理した事を評価され、ミリアスのアシスタントに抜擢されたそうです。

 又、プロダクション・コーディネーターにクレジットされているラタ・ライアンは、後のスピルバーグ監督作やプロデュース作に同じ肩書きで何本か参加後、『ジュラシック・パーク』で共同製作者に名を連ねます。ファースト助監督のジェリー・ジースマーは後にキャメロン・クロウ作品にも参加し、コッポラの『地獄の黙示録』では助監督だけでなく、有名な台詞「極度の偏見をもって抹殺せよ」を言う上官の役で出演。

* キャスト

 主軸となるストーリーがない文字通りの群像劇で、一体誰が主役なのか分かりませんが、スタッフと同様、当時のスピルバーグを取り巻く幾つかのグループに属する人達と、映画史に輝く名優達が混在しているのはユニークなキャスティング。総じて過剰な演技を強いられているため、どことなく空回り気味なのが痛々しいものの、画面の華やかさは壮観です。

 まず、ブルース・ブラザーズとして有名なコメディアンの二人、ジョン・ベルーシとダン・エイクロイドは、ジョン・ランディス監督組。ランディス自身も、全身真っ白でバイクに乗って現れる伝令の役で出演(翌年、今度はスピルバーグがランディス監督の『ブルース・ブラザーズ』に出演します)。ベルーシは重度のコカイン中毒のため、簡単な場面でさえまともに演技出来なかったとも言われています。ランディス組からは『アニマル・ハウス』のハンサム男、ティム・マティソンも出ている他、後にコメディ俳優として大成するジョン・キャンディも出演しています。

 さらに、ゼメキス監督の『抱きしめたい』からは、ボビー・ディッシッコ、ウェンディ・ジョー・スパーパー、エディ・ディーゼン、そしてB級映画の名脇役ディック・ミラーが出演。ミラーはゼメキスの2作目『ユーズド・カー』にも出ている他、ジョー・ダンテ作品でも顔なじみの役者さんです。ジョン・ミリアス組からは『デリンジャー』のウォーレン・オーツ、フランク・マクレーが参加。マクレーはこの後『ユーズド・カー』、スピルバーグ製作『ニューヨーク東8番街の奇跡』にも出演します。

 スピルバーグ組では、『ジョーズ』のロレイン・ゲイリーとマーレイ・ハミルトンが出演。冒頭に『ジョーズ』のパロディがあるため、サメの餌食になったスーザン・バックリニーが再び顔を出します。『激突!』でガソリン・スタンドの女店主を演じたルシール・ベンソンも、同じ役でジョン・ベルーシと共演。又、慰問パーティのチーフ・ホステスを演じるペニー・マーシャルはテレビの人気女優でしたが、スピルバーグの妹アンの脚本を映画化した『ビッグ』で監督デビューし、続く『レナードの朝』『プリティ・リーグ』で売れっ子になります。

 さらに黒澤映画のスター、三船敏郎、近年はティム・バートン作品に連続出演している往年のドラキュラ俳優クリストファー・リー、スピルバーグが敬愛するスタンリー・キューブリック監督の『博士の異常な愛情』等で知られる名バイプレイヤー、スリム・ピケンズ、『ネットワーク』でオスカー候補になったベテランのネッド・ビーティが出演。ブライアン・デ・パルマ監督と結婚したナンシー・アレン(彼女らとスピルバーグ&エイミー・アーヴィングはダブル・デートをする仲だった)も、飛行機を見ると欲情する秘書の役で出演。名匠サミュエル・フラー監督は、作戦本部の司令官で怪演。フランシス・コッポラ作品の多くでプロデューサーを務めるグレイ・フレデリクソンは、ロバート・スタックの部下役。又、ミッキー・ロークが小さな役で出ています(これが彼のデビュー作です)。

* アカデミー賞

 ◎ノミネート/撮影賞、視覚効果賞、音響賞

 

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