製作のリチャード・D・ザナックは、オリジナル版のプロデューサーも務めたベテラン。映画史に残る数々の名作を手掛けてきた彼ですが、本作で出会ったバートンは特別な存在と公言していて、本作以降のバートン作品も一手に引き受けています。「撮影中、彼が座っている所を見た事がない。ものすごいハードワーカーだよ。真の天才なのに人間としても素晴らしい、両徳を兼ね備えた稀な資質の持ち主だ」。製作総指揮のラルフ・ウィンターもバートンを絶賛しています。「彼の情熱を見ればこちらも熱くならざるを得ないさ。ミーティングの時だろうが、廊下だろうがどこだろうが、いつも物語について思案している。それが皆の士気を高めるんだ」。 脚本は、ニューズウィーク誌の編集長やエスクァイア誌の顧問編集者も務めたウィリアム・ブロイルズ・ジュニア。ジャーナリスト出身らしく『アポロ13』や『キャスト・アウェイ』など、リアルな感触の作品が得意な印象です。ザナックとバートンは、彼の初稿はSF色が強すぎると感じ、『マーキュリー・ライジング』『マイティ・ジョー』などのコンビ、ローレンス・コナー&マーク・ローゼンタールにリライトを依頼しています。 撮影監督は、フランス人のフィリップ・ルースロ。英国やハリウッドに活躍の場を移し、『リバー・ランズ・スルー・イット』でオスカーに輝いた名手ですが、その映像美には定評があります。シネスコ・サイズの本作では、アナモフィック・レンズを使って壮大な画面を作りながら、最小限の照明機材で撮影を行ってプロデューサーを驚かせました。 プロダクション・デザインは、『スリーピー・ホロウ』でオスカーに輝いたリック・ヘインリックス。バートン的なデフォルメこそ控えめですが、冒頭の宇宙船から、モン・サン・ミッシェルを思わせる外観のエイプ・シティ、神殿のようなその内部、砂漠の野営キャンプ、カリマ遺跡などなど、目を見張るデザインの数々は垂涎もの。一方で、巻き貝みたいな形状のヘルメットなど、バートン自身の初期スケッチがそのまま採用されている部分もあります。衣装デザインは、バートン作品を多く手掛けるコリーン・アトウッド。俳優の顔がメイクに隠れているので、階級や役職が分かる彼女の衣装は、キャラクターの判別や性格表現に大きな役割を果たしています。 特殊メイクは、この分野の第一人者リック・ベイカー。『エド・ウッド』でもバートンと組んでいますが、バートン風のアニメチックな猿にはしない事を条件に参加し、数百体の個性の異なる猿を造型しました。ある面において、本作はリック・ベイカーのメイクを鑑賞する映画だとも言えるでしょう。特殊メイク業界の人は猿が好きな人が多く、ベイカーも本作を「特殊メイクのアーティストなら一度はやってみたい仕事」だと言っています。 ダニー・エルフマンの音楽も本作ではシリアス一辺倒で、ユーモラスなアイデアはなし。何十種類もの打楽器を重ねたプリミティヴなサウンドは、映画全体の硬質なタッチを増幅させています。楽器編成は通常と逆で、打楽器と金管がメインで弦楽器が少ない、妙なオーケストラになってしまったとの事。例によって非常に印象的なオープニング・タイトルでは、原始的な打楽器のリズムが鳴り渡るサスペンスフルなテーマ曲をたっぷり聴く事ができます。 |