ガス・ヴァン・サント

Gus Van Sant

* プロフィール

 1952年7月24日、ケンタッキー州ルイヴィル生まれ。後に家族の都合で、オレゴン州ポートランドへ引っ越す。ロード・アイランド・スクール・オブ・デザインで絵画と映画を学び、監督・脚本家のケヴィン・シャピロの製作助手として、製作・脚本に携わる。トーキング・ヘッズのデヴィッド・バーンも同級生。ニューヨークの広告業界で250万円の資金を貯め、ポートランドに戻って『マラノーチェ』を自主制作。ゲイとマイノリティを扱ったテーマのため、ほとんど興業されず、映画祭以外ではお蔵入りの状態となる。

 しかし、同じくポートランドで撮った『ドラッグストア・カウボーイ』がブレイク、低迷していたマット・ディロンのキャリアを再生させ、続く『マイ・プライベート・アイダホ』ではアイドル俳優だったリヴァー・フェニックス、キアヌ・リーヴスを実力派へ押し上げた。『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』や『ミルク』など、オスカーにノミネートされる作品も撮る一方、『ジェリー』『エレファント』『ラストデイズ』と、極限の少人数スタッフによるゲリラ撮影で処女作に立ち返るインディペンデント精神も忘れない。

 映画以外でもCMやMVの監督の他、写真集『108 Portraits』や小説『PINK』など多彩な分野で活動。自身がゲイである事をカミング・アウトしている事もあり、若者やマイノリティに寄り添った、ナイーヴかつ実験的な作品を発表し続ける。

* 監督作品リスト (作品名をクリックすると詳しい情報がご覧になれます。)

 1985年 『マラノーチェ』 

 1989年 『ドラッグストア・カウボーイ』 

 1991年 『マイ・プライベート・アイダホ

 1994年 『カウガール・ブルース

 1995年 『誘う女』 

 1997年 『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち

 1998年 『サイコ』   

 2000年 『小説家を見つけたら』    

 2002年 『ジェリー』     

 2003年 『エレファント』      

 2005年 『ラストデイズ』      

 2006年 『パリ、ジュテーム』(オムニバス)〜 『マレ地区』  

 2007年 『パラノイドパーク』     

        『それぞれのシネマ』(オムニバス)〜 『ファースト・キス

 2008年 『ミルク』   

        8 - Eight -』(オムニバス)〜 『丘の上のマンション

 2011年 『永遠の僕たち』    

        BOSS/ボス 〜権力の代償〜』シーズン1(TV)

 2012年 『プロミスト・ランド』    

 2015年 『追憶の森』   

 2018年 『ドント・ウォーリー』  

* スタッフ/キャスト

 ガス・ヴァン・サントの映画を支えるスタッフ、キャストたち  

* 概観

 インディペンデント系の印象が強いサントですが、『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』のヒットとアカデミー賞ノミネートで、広く名前の知られる映画監督となりました。しかし、彼の作品群を振り返ってみると、やはりそのフットワークの軽さ、自由さは、ハリウッドのメインストリームと異質という感じがします。それは、『誘う女』『サイコ』『小説家を見つけたら』と、派手ではないものの一応スターを起用したメジャー作品を連発した後に、『ジェリー』以降、最小限の製作規模による実験的な映画作りに戻ったり、素人に近いキャストで映画を撮ったりという、原点に立ち返ったような時期があるせいかもしれません。

 しかし、彼の作品はそうでなくても共通して、既成概念に束縛されない自在さと、大衆に迎合しないマイペースな感性が貫徹されています。それは又、社会がエコライフへの流れに向かっているのとシンクロしているようにも見え、それがどことなく彼の作品を、自然派の無添加製品や有機農産物、或いは音楽でいうアコースティック、アンプラグド的な括りに分類したくなる要因にもなっています。もっとも、そういったブランド化、ジャンル化こそ、サントが最も嫌う風潮なのかもしれませんね。

 手法やモティーフの面で言えば、彼の多くの作品に共通するのが、マイノリティや若者を主人公に据えた物語、淡々とした語り口、即興性の強い演技とキャメラワーク、監督の故郷であるポートランドでのロケーション、詩情の豊かさ、そして、価値観やモラルを押し付けない中立的な視点です。映像面での特徴は、田舎道や荒涼とした大自然をよく背景に使う事と、空を流れる雲の早回し映像をトレードマーク的に挿入している事。

 ちなみにその雲の早回しは、フランシス・コッポラ監督の『ランブル・フィッシュ』からの引用だとサント自身認めていますが、コッポラ自身も『ジャック』で再度この手法を使っており、主人公の成長スピードの速さを象徴するのに効果を挙げています。そういえばこの二人、アートとしての映画製作を行っている雰囲気がある点で近似していますね。又、音楽の使い方もサント作品は独特ですが、音響全体をコラージュのように捉える傾向もあり、そこに着目すると、レスリー・シャッツという音響デザイナーの名前も浮かび上がってきます。

 キャスティングにも特色があって、ブレイク前の若手俳優や演技経験のない一般人を起用したりする事が多いのは、サント作品のテーマや映画作りの姿勢とコンセプトが一致しています。それから、ホアキン・フェニックス、レイン・フェニックス、ケイシー・アフレック、ヘンリー・ホッパー、シュイラー・フィスクなど、有名スターの兄弟や二世俳優をよく起用しているのも特色。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーやソニック・ユースのキム・ゴードンらミュージシャン、ウィリアム・S・バロウズやバック・ヘンリーら作家、デヴィッド・クローネンバーグやハーモニー・コリンら映画監督など、俳優以外のキャストも多用。又、マット・デイモンら俳優から持ち込まれた脚本をしばしば映画化している他、若い脚本家の起用も目立ちます。

 作風からして、ただ淡々とキャメラを回して俳優に寄り添っているような監督と思われがちですが、『グッド・ウィル・ハンティング』や『小説家を見つけたら』など感動的なドラマ・メイキングも巧いし、『誘う女』や『カウガール・ブルース』のような、細かくカットを割って編集で作り込む映画にも卓越したセンスを発揮。『永遠の僕たち』や『追憶の森』のナイーヴな優しさは、決して自然体の演出で無為に出て来るようなものではないし、『ミルク』や『エレファント』の禍々しい殺人シーンなど、観客を震え上がらせる恐怖演出にも見事な手腕を見せていて、演出のスキルはかなり高い人と思われます。

 

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